1000744 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

鶴舞う形の・・・

鶴舞う形の・・・

「初恋はオクラホマミキサー」

農家の長男だった私は、小学生の頃から家の手伝いをさせられていたので

子供会(育成会)の行事には殆ど出たことが無かったが

何故か6年生の最後の一泊キャンプだけには参加させて貰えた。

キャンプ場で夕食の準備をしていた時に

一人の女の子が最初から最後まで私の横で手伝ってくれて

普段、炊事などしたことが無い私にはとても心強かった。

そして夕食後のキャンプファイヤーの時には

全員でフォークダンスを踊ったが

「マイムマイム」も「オクラホマミキサー」も初めてだった私のところへ

例の女の子がやって来て「オクラホマミキサー」を手取り足取り教えてくれた。

キャンプファイヤーの灯りで照らし出された彼女は

丸顔におでこがちょっと目立つ可愛らしい女の子で

私はその女の子にすっかり恋してしまった。


そして翌年の春に中学に上がると、なんと同じ中学にその女の子を発見した。

私よりも1学年上の上級生だったが

私は学校へ行って彼女を見かけると、この上もない幸せを感じるようになった。


そして「まさか」は、起こった。

ある日の放課後に知らない上級生の女の子がやって来て

「話があるので公民館まで来て欲しい」

と私を公民館まで誘導したのだ。

そして公民館に入ると例の彼女が待っていて

「私は同級生の〇〇君と噂になっているけど、付き合ってはいない」

とか色々な事を延々と喋りだした。

ふと彼女の口元を見ると喋りすぎで口角に泡が溜まっていた。

彼女の話を聞きながら私は、彼女よりも彼女の為に私を呼びに来た上級生の

思いやりと優しさの方が気になっていた。

結局、彼女が何を言いたくて、何を求めていたのか分からず

私は一言も発する事も無く

その後は、彼女からの連絡は無く

勿論、私から連絡する事も無く

私の「オクラホマミキサーの初恋」は終わった。

しかし、あの時、私の気持ちは誰にも話した事が無かったのに

何故、彼女は私に話しかけてきたのか?

分からなかった。

そして50年以上経った今でも「オクラホマミキサー」の曲を聴く度に

キャンプ場での、可愛らしい丸顔の優しかった彼女を思い出す。


© Rakuten Group, Inc.